2023.04 .03

“ともビバ”イベント in winter

“ともビバ”イベント in  winter

ともビバ Winter Park

準備風景

当日の朝、お天道様が雲に隠れ、暗くどんよりした空模様の中準備をしていました。スタッフたちも気持ちが上がらず、言葉を交わすことなくせかせか準備・・・

10時半頃、
スキーウェアを着た、男の子が車から飛び降り、イベント会場に駆け寄ってきました。
入口で大きな声を出し
男の子:「はやく行きたい!遊びたい!!」
お母さん:「早く来すぎてしまったわね、まだ始まってなかったわ。」
スタッフ:「まだ準備中ですが、かまくらの中でお待ちください。」
話しかけているうちに自然と笑顔が溢れてきました。
(そうだ、この声のために準備していたんだな、)
と実感が湧き顔上げ、最後の調整へ。

開始時刻の11時に近づくにつれて子どもたちとわんちゃんたちの姿が会場に集まって来ました。
雲の合間からスポットライトのように光が差し込み、真っ白な舞台をキラキラと照らし、
子どもたちの笑い声と共に、ともビバイベントが始まりました。

今回のイベントのテーマは、
「子どもとわんちゃんが共に楽しめる、雪中運動会!!」

江丹別の森から持ってきた丸太ステップ

2週間かけて、緑の森のスタッフ、大学生、高校生、東京からきた若者たちと作り上げた、

“ともビバ Winter Park ”

昨年も同様、旭川の美しすぎる銀世界に魅了され始めたかまくら作りですが、今年は「旭川教育大学の未来こども研究会」と「旭川明成高校生」にも企画段階から参加してもらい地域と繋がりながら準備開催しました。
皆さん冬の旭川の光景は当たり前すぎて雪に対してネガティブな印象を持っていましたが、実際にかまくらを掘り、雪の滑り台を作っていると、さすが自然と身近に生活しているだけあってアイディアが湧き、子どもたちがより楽しめる空間にしていくための創意工夫をしてくれました。

様々な企画が開催されました!

野中さんの指導の元はじめての薪割り体験

1.森の廃材を使ったワークショップ

江丹別の野中龍馬さん監修のもと、旭川明成高校の学生さんたちが主体となりフォトフレーム作りを企画しました。曲がった木を上手に活かし、世界に1つだけの作品を制作。何時間もそこに座り制作している子もいました。
また、ワークショップの周りには、ぱちぱちと燃える焚き火が置いてあり薪割り体験も一緒に出来ました。全身の力をかけ一点に集中し、スパッと割るその感覚はとても気持ちが良いもので、子どもから大人まで、列が出来るほど人気のコーナーでした!

2.みら研企画 的当て大会
旭川大学の「子どもの未来を考える研究会」の学生さんたち主催で、子どもの的当て大会を開催しました。雪の中に様々な的を設置し、そこに雪玉を当てるゲームです。
今回、みら研の学生の皆様と出会い、企画していく中でイベントの趣旨と学生たちの想いのすり合わせていくことや、忙しい合間をぬって準備をすることなど難しい部分も多くありました。しかし、最後にイベント終了後、主体となってくれた学生さんが
「作りあげるという経験の先にこどもたちの笑顔があり、とても良い経験ができました」
とおっしゃっていただきました。
いつも、旭川の子どもの食堂のお手伝いに行くことが主な活動となっています。だからこそわかる子どもたちの視点で楽しい時間と空間を作り出してくれたことは私たちにとっても刺激になりました

3.緑の森しつけインストラクターによる企画

緑の森でしつけを行っているスタッフがわんちゃんと飼い主さん、こどもたちみんなで楽しめる企画をドックランで開催しました。
童謡にあるようにわんちゃんは基本的に雪が大好き!!
子どもたちと雪で遊ぶ姿は、なんとも言えず私たちにしあわせを与えてくれる風景でした。
「わんちゃんのかまくらを作ろう」企画では、こどもたちが雪でわんちゃんたちの小さなお家を作りました。小型犬には小さなかまくら。大型犬には、みんなで協力して大きなかまくら。最後には絵の具で外をデザインし、うれししそうにわんちゃんたちが入っていく姿を見ながら子どもたちの共ビバでありまなビバであると思います

4.畜産動物のアニマルウェルフェア(動物福祉)の発信

昨年、私たちは※アニマルウェルフェア畜産協会の会員となりました。
※上団体は、家畜の目線に立ち共に生きる家畜の暮らしを改善するために活動しています。

ストレスが少なく生きる家畜のしあわせ、命を育む生産者のしあわせ、命をいただく消費者のしあわせ。それぞれのしあわせが続いていく新しい家畜のあり方、アニマルウェルフェア畜産協会と共に、これから発信していきます。
今回のイベントでは、アニマルウェルフェアを実践している旭川の畜産農家、クリーマリー濃夢の牛乳でクリームシチューを作り、こども食堂として無料で配布しました。「おいしい」と子どもたちが浮かべる笑顔から、その美味しさの背景にある想いに触れてもらうために展示ブースを設け、繋ぎ食育として発信しました。
NPO法人手と手の森では、設立からの思い出ある様々などうぶつの手を取り合い、輪のように繋いでいくために、北海道から畜産どうぶつの福祉にも関わっていきます!

最後に

終日、子どもたちの背中を押してあげる高校生

真冬の野外イベントのため短い時間の開催でしたが、たくさんのことを気づき、教わる1日となりました。

1つに、学生たちの社会を素直に見る力と柔軟な思考、そしてネルギーに満ち溢れた姿に私自身大切なことを思いださせてもらいました。
明成高校のある1人の学生が、フォトフレーム作りの担当者として今回参加してくれていたのですが、イベントが始まってからすぐに、滑り台の天辺でこどもたちの背中を押しはじめました。お昼の時間になっても降りて来ないので、私が声をかけにいくと、「大丈夫です、ここにいさせてほしい」と楽しそうに答える彼に、私は感謝と共にこの場所を作りだす意義を痛感しました。
彼の決められたことをするのではなく、自らその瞬間を楽しむポジションと、誰かの笑顔のために動く原動力に心が打たれました。もちろん自分たちの企画に人が足りているという判断の上で動いた行動です。「こどもが大好きなんです」と笑う彼は4月から東京の大学生。大きく成長し、またふるさとの旭川に戻ってくることを密かに期待しています☆

東京からのこの日に合わせて来てくれた“ともビバメンバー”

もう1つはどうぶつ病院から発信していくことの意義です。

今回、会場のかまくらと滑り台の制作期間を約2週間。開催日のちょうど1週間前は、日本初の動物看護師国家試験の日でした。
緑の森の看護業務に携わるほとんどのスタッフが受験をするため、あまり協力を仰ぐのが難しいと思っていたのですが、看護統括スタッフの声かけによって休診時間の合間を塗ってかまくら制作に。
休みの日に子どもを連れて手伝いに来てくれるスタッフもいました。

開催日前日、かまくらが完成し他の準備をしている中院内のスタッフがかまくらに登り何時間もかけて耳をつけていました。彼は入院担当で言葉が多いスタッフではないのですが、いつも彼の行動からは優しい創造力を感じます。先日新聞のインタビューの中で彼は、つらい場面に立ち会うたびに自然と触れ合いながら乗り越えてきた話をしてくれました。大変などうぶつたちと日々向き合うからこそ見えてくれるしあわせを求める欲求こそ生み出す力へと繋がっているなと感じます。
準備作業が肉体労働が多いこともあり、とても救われました。

どうぶつ病院で働くスタッフは、目の前の命に向き合うとても緊張感のある仕事を日々こなしています。この会社に入ったばかりの頃、わんちゃんやねこちゃんの寿命は人間の寿命の約1/4だから、動物病院にいるスタッフそれだけ死と向き合う過酷な仕事なんだよ、と聞いたことを鮮明に覚えています。私はバックオフィスに携わっているため実際に現場に立つことはないので、本当の意味でその心はまだまだわかりません。それでも同じ職場で働く中で見えるかけがえのないリアルな瞬間を目にするたびにここどうぶつ病院だからこそ表現できる価値を社会に繋いでいきたいと強く思っています。

それは今回のイベントのような直接的な発信ではないかもしれませんが、ここで働くスタッフとそしてどうぶつたちと飼い主さんたちが暮らす社会が福祉が守られる場所であるように、
これからも“ともビバ”を続けていきます。

text by  KIRIKO